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「ミッドサマー」という映画について触れたいと思います。触れさせてください。

 

「ミッドサマー」を昨年観た。もうドチャクソにゲロ吐くほどに面白かった。繰り返し観てしまった。ただし、これは「人にお勧めはできない映画」である。

 

そう、ミッドサマーとは「もうその映画無理!」ってクソミソに批判する人か、「あの映画マジサイッコー!」という作品を崇拝するような人のどちらかしかいないと思う。賛否どちらかしか無い、偏った映画です。予告動画を観た人も何人かいると思う。だがあの予告じゃ三分の一も伝わらん。このブログにて僭越ながら、ネタバレはあるが語らせてくれ。いや、語らせてください。恐縮です。

 

 

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2019年公開、アリ・アスター監督作品

 

もう3年前の映画か。

 

 

ざっくりあらすじを説明すると、

 

鬱な女学生が家族の死を受け更に鬱。自分の彼氏が、その彼氏の友人たちと大学論文の為にスウェーデンの閉鎖的な村社会(所謂コミューン)に行く事に半ば強制的に付いていくと、独特の村の風習を目の当たりにする。圧倒的な村社会によるカルチャーショックを次々と受けつつも有無を言わせぬ状況の中、最終的に彼氏や彼氏の友達が生贄にされて主人公の鬱女学生がなんやかんやあって村の女王に祭り上げられる。そしてエンド。

 

といった話(雑)。

 

面白い事に、伏線とは言い難い伏線が冒頭のタペストリーに存在する。というか話のあらすじをタペストリーにして約10秒ほど流れる。冒頭にストーリーをネタバレするんだけど、その時点では考察はできない。だってあんな突飛的な事になるなんて思わないし。なので、2回目に観てこそ理解できる。こういったあからさまな伏線や分かりにくい伏線の仕掛けは要所要所にあって、「あれ?最初の方にあった気がする」と気づいたり気づかなかったりする。気づかなくてもうっすらと不気味な違和感が残りつつ話が進む。これがマジで面白い。

 

しかし、これだけだと普通の面白い映画になってしまうんだけど、ポイントとして、ホラーであるジャンルなのに全編通して「明るい」のが印象的。

 

 

スウェーデンでは白夜、つまり夜でも昼のように明るい時期にこの映画の大軸となる夏至祭があって、その夏至祭の9日間に様々な物事が進む。よくホラーは暗い色使いで映画が描かれるんだけど、そんな固定観念をどっかに置いてきたのかどんなにグロでもエグくても昼間の明るさで鬱進行が行われる。斬新。

 

 

もう1つのポイント、「音」。これは凄い。

驚かす演出は無くはないけどビックリ系はほとんどない。淡々としてる感じは無いけど普通の日常のように物事は進む。ただし、映画の中で気持ち悪い音、不快に感じる音がとてもある。例えば、彼氏の友達が後ろから鈍器で殴られたシーンがある。その時その友達がいびきのような音を出す。これは脳疾患でよくみられる症状で「あ、これ死ぬじゃん。。ヤバ…」と観る側にじわじわ思わせる。

 

加えて、絶叫がほぼ無い、ていうか無かったと思う。これも邦画ホラーでありがちな若手女優の絶叫、「叫んでればいいんでしょ感」が全く無い。アリ・アスター監督は絶対ひねくれてる。従来のホラー映画からかけ離れている。全く新しいホラー映画。もしかしたらホラー映画でも無いのかもしれない。

 

 

そして、鬱の所作が完璧。たぶん鬱の人が観たら悶絶するくらい完全なる鬱を演じている。現在鬱な人は嫌悪すると思う。泣き方なんかはマジでこうだよなって思う。過呼吸になりながら声を出さずに、一気に息を吸う所。鬱の人はこういう情緒になるし、こういう行動するよね、ということをよく分かっている。主演女優に脱帽。

 

 

グロと書いたが、印象に残るグロシーンが多い。頭から離れない。老夫婦が交互に崖から飛び落ちるシーン。夫の方が飛び落ちたけど死ななくてハンマーで顔を潰すシーン。死体がふやけて皮だけになり生贄に捧げられるシーン。クソ気味が悪い。嫌悪感を逆撫でしている。そこの村のコミュニティにとっては、死は、殺人は、習慣の一つなのでは?と思わせる雰囲気であり所作。人の気持ち悪さ、純粋な残酷さが存分に出ている。

 

 

こうやってみると、グロだとか人が怖いだとか鬱の描写がエグいとか書いてみて、「何でそれが面白いって言えんの!??」って思うでしょう。しかし、あくまでも今まで挙げたものは要素の一つでなのです。ある意味ではサスペンスホラーであって、サスペンスホラーというジャンルは考察して楽しめるもの。映画の中のディテールが細かく、時に大胆で、観る側をやたらと刺激してくる。

 

洋画ホラーの傑作といわれる作品では、「やっぱ生きるって大事やん?」とか「何が何でも生き抜け」みたいな裏テーマがあったりする。ミッドサマーに関してはあくまでも「村の夏至祭に生贄にされて、主人公は心情と相まって良いように祭り上げられる」事を忠実に寄り道無く描かれている。そこにはピュアなイマジネーションみたいなものしかないし「敢えての哲学性、啓発性」が無いように思える。

 

村独自の考え、生き方は哲学的かもしれんが。

少なくともそういう「作り手側のいやらしさ」は感じなかった。余計な味付けは無いけど、そもそも元がマニアックなものなので。

オズの魔法使いの残酷バージョンみたいな映画でした。

 

 

ちょっと考察が苦手なので殴り書きみたいな映画の感想と紹介でしたが、「おすすめはできない」と書くと人間は見てしまう生き物なので、敢えて言いたい。

 

マジ一回見て!!

 

そんで感想をちょうだい!

 

居酒屋でな!